五島の旅⑥ 3日目の朝 前半

台風13号の接近によって、長崎五島間の波の高さが3mから7mとなって高速船の運航が休止になった。そのために、上五島(かみごとう)の最北端にあるホテルを午前中に出なければならなかった。そのホテルは、温泉の出るリゾートホテルで、かなりの高台にあり、真下の赤ダキ断崖は、火山の噴火口だった。その前の湾の突端にある小さな三角形の山端の矢堅目(やがため)灯台は、大昔からのろしを上げる場所で有名だったようだ。
矢堅目
矢堅目の向こうは、東シナ海で、そこから中国や韓国の密漁船が頻繁に入ってくるという。それを防ぐために、のろしを上げて、まずホテルのある番岳展望台へさらに次の山、次の山と博多までのろしで半日以内で伝え、奉行が博多からやってくるというシステムである。電話や無線のない時代によく考えたものだと思う。
私は、30年以上前に韓国の済州島に行ったことがあり、夜、海岸を数人で歩いていると、藪の中から迷彩服を着た若い兵隊が突然現れ、機関銃をこちらに向け、「ここから侵入するな」と怒鳴った。中国や北朝鮮からの密入船が頻繁にやってくるらしい。
それで、当時も密入船を防ぐために、のろしを上げて博多方面からやってきて、そういった集団を防いでいたのだろう。地元民にとって、彼らは厄介な存在だったに違いない。闇に紛れて侵入する黒い侵入者と戦っている姿をうっすらと垣間見ることができた。
それから、山々の美しい風景を眺めながら、有川港へ着き、フェリーに乗って、軍艦が多く停泊している佐世保港まで行った。台風襲来前で何とか海を越えて、JR佐世保駅に辿り着くことができた。