カマキリ

白い乗用車を天気の良い日に洗い始めると、必ず大人のカマキリがやってくる。今回もクーラーの室外機の上に、こっそりと座っていた。近くでよく観察すると、右手の下に小さな三角形の頭を入れていた。僅か30㎝くらいまで近づくと、ほんの少し頭をこっくりと前後に揺らしていた。ちょっとの間でも居眠りするのだと感心した。すると私の息遣いに気づいたのか、小さな頭を持ち上げ私の顔を見た。少し後退りしたが、逃げることはなかった。
カマキリ
「君も大変だね」と言葉をかけると、じっと私を見て自分の転生を教えようとしたが、よく分からなかった。ただ、アトランティス時代にいた側近で、何度も転生するたびに自分の意志とは真逆の境遇に落とされた風なニュアンスだった。車を鹿革で拭き終えるころ、室外機を後退りしながら後ろ足を踏み外し落ちたまでは見えたが、その近辺にはもういなかった。
縁とは不思議なもので、人間だけではなく昆虫との深い縁もあるものなのだと、深いため息をついて部屋に戻った。