連泊

この萩の町に来たのは、心身を整えようと温泉治療を行う目的のためでもあった。眠れない朝にカーナビで目的地を押したのが、たまたま萩にあるホテルだった。
次の日の夕方に露天風呂に入っていると、上空をトンビと少し小型の鳥たちが、何やら騒がしく叫んでいるのが分かった。すると、小さな鳥が仲間に向かって「ここは危ない!」と忠告しているように聞こえた。そのすぐ後、トンビがその上空で無限という文字を描きながら、小さな鳥たちを狙っているのが確認できた。
私は、優雅な気持ちで温泉に浸かっていたが、彼らには食事のための闘争が繰り広げられていたのだった。小さな鳥は、日没を前にして、餌を確保し食べなければならない。そう考えた時、美しい日没が、美しいとは思えなくなってしまった。彼らの必死になっている生き方を見習う必要があるように思えた。しかし、彼らは前世で人間の時代もあったようで、その時は、気のみ気のまま過ごしていたのだった。のんびりと過ごす公務員たちは、将来、あのような鳥にもなるのだろうかと考えながら、連泊した夕焼けの空を眺めていた。
すると、5時になって、オルゴールの音が町中に響き渡った。「夕焼け小焼け」の音楽だった。こんな自然主体の街があるのだなと感心した。鳥たちの争いも、この音が消える頃、どこかへ立ち去ってしまった。