相談ごと

私は、偶然その男性と町で出会った。
一度見たことがあるので、お互いが「お久しぶり」との会話となった。「どうしてました?」と投げかけると、50歳を過ぎたその男性は、以前よりは白髪交じりとなって「どうもこうもないですよ。つい最近まで刑務所に入ってたんですよ」と言う。
「どうしてまた?」と聞くと、「娘を殴って、それが、彼女の恐怖になったのでしょう。16歳ですから、未成年ということで保護されて、児童相談所から警察に通報があって、逮捕されて刑務所に6か月間入っていました。最近、出所したばかりです・・・娘可愛さに叱ったのが、最近は厳しくて、愛情と言っても通用しない世の中になってしまって・・・娘とは会っていないんです」と。
彼は数年前離婚し、娘を引き取り、娘のために仕事を2つ以上抱えて一生懸命だったのだが、娘の反抗期も気づかず、ひたすら遊びもせずに働いていたようだった。
だが、私には先祖に拘束され自由を奪われた親子の悲惨な生活が目の前に浮かんだ。娘のために一生懸命しているが、先祖のためには何も気づかない男の言い訳にしか聞こえないので、「とにかく頑張ってくださいね」と言い残して、彼の下から立ち去った。どこの家にもある相談ごとだった。
彼の言葉の中で印象的だったのは、刑務所に入っている間に、4人部屋の中で過ごしたが、みんな覚せい剤で捕まったものばかりだった、と言っていた。世の中が、本当にどろどろとしたものばかりで染まってゆくのが感じられた。恐ろしいことである。

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