温泉にて 2

脇田温泉の狭い露天風呂は、入る場所が2つしかなかった。全くの露天風呂と屋根のある風通しの良い露天風呂。外の露天風呂は、会社の団体客20名ばかりで占領され、角打ちの酒を飲みながら賑やかに雑談をしていた。その中にコンペで一緒になった白髪の男性はいた。
しばらくすると、こちらにやって来た。気さくな人柄で、どこにでも合流できる性格だった。
「あちらは賑やかそうですね」と私が言うと
「どちらさんですか」と不思議そうに首を傾げた。
「さっきコンペで一緒だったじゃないですか」
「ヘエ、全然違いますね、コンペとは」
そんな話をしている内に、彼が不動産屋と聞いていたので、質問をしながら、こちらの仕事も話してみた。
「自殺者の物件とかは、どのようにしているのですか」と聞くと
「昔は報告も何もしなくて良かったのですが、今はそうはゆきません・・・報告しても、平気な人もいれば、物件の値引きを言う人もいますね。大方は家主が霊能者を呼んで適当にするそうですね・・・そう言えば、こんなこともありました」
その内容は、スポーツ会社が選手の育成のために大きな土地を買い、運動施設を作ったと言う。しばらくすると、その会社から電話がかかり、
「少しも選手の成績が伸びないんだが、あそこの土地に井戸かなんかなかっただろうか、もしそれを何もせずに蓋をしたら大変なことになる」
と言うので、彼は古井戸に蓋をしたことを思い出し、知り合いの霊能者を教えたそうである。
「それから、どうなったかは知りませんが・・・」
不動産屋には、縁が欲しかったし、彼もゴルフの腕を上げたいので、お互いにのぼせてしまうくらい長い話になった。

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