ギリシャ(4)

私がギリシャを訪れた目的は、エーゲ海に浮かぶ島にアトランティスの名残があったのかどうかを確かめるためである。私の旅は、いつでも単なる観光ではない。アトランティスは、私が最後の最高神官だったという過去世があったからでもあるし、ギリシャ神話やキリストの痕跡を確かめるつもりでもあった。しかし、ここへ来て半ば真実ではないことがあまりに多いと分かり始めたのである。

パトモス島 さて、クシャダスを去って船に戻り、ひと寝入りして、午後6時にパトモス島へ入港した。この島は、聖ヨハネが、キリストから啓示を注がれたという洞窟が山の頂上付近にある。そこは世界遺産となっており、黙示録を書いた洞窟として非常に有名である。 崖にあるその洞窟は、観光客が狭い通路にびっしりと連なり、洞窟を見ようとかなりの行列になっていた。薄暗く狭い洞窟だった。神々しい場所とは無縁のような気がした。それは私が日本人だからなのかとも思った。しかし、聖ヨハネが受けた啓示が正しいものだったかどうかは非常に疑わしいものである。
私が見る限り強烈な光など感じなかったし、黄色く細い光のようなものはあったような感じでもあるが、黙示録としての高貴な光ではなかった。彼らの直感的な判断もあるのかなと思えたし、創作も加味されたとも思えた。ギリシャ正教を本来の尊厳のあるものとして流布させる方法の一環と考えれば、仕方のないものかも知れない。
それから、聖ヨハネ修道院にも訪れたが、普通の田舎にある教会に他ならなかった。キリスト教信者にとっては、屈辱かもしれないが、キリストの純粋な気持ちとは裏腹に、あまりにも誇張化され金銭的な繁栄だけが先行しているようにも思えてならなかった。

エーゲ海の海とそれに反映する夕日を眺めながら大型客船に戻った。部屋に入ると、無くなっていた香水が、机の上に戻っていた。間も無く掃除担当の黒人が部屋をノックした。開けてみると、掃除担当者だった。英語で「椅子の下にありましたよ」と言って、ニコニコしながら戸を閉めた。私はありがとうと言った。
しかし、「あれっ」と思った。朝、出かける前に香水がないと気づいたが、確かベッドの下も探した筈だった。昨日、夕方出かける時に大きなトランクケースは閉じて、香水だけ残し、開くのは面倒だからと小さなバッグに入れ、バッグを奥の金庫の上にそのまま置いたはずだったのだ。
そして、添乗員にそのことを話していた。さらに添乗員が船の担当に話してくれた。
昼、一旦帰った時に、掃除担当のものが、飲んだ水の料金を払えとかサインも要求したので、その紙の下の余白に英語で「香水が無くなった、どこにある?」と付け加えた。そして、帰って部屋に入ると香水があったのだった。
しかし、新しい紙があって良さそうなのに、サインしたはずの下半分がちぎられた用紙が置かれていた。思わず、彼が盗んだとはっきり分かったのだった。彼は、昔、この近辺で海賊をしていた男だと分かった。今回もこのような泥棒をすんなりするとは、次の転生はないといずれ分かるだろう。