「野火」

2014年に映画化された大岡昇平原作の「野火」をケーブルテレビで初めて見た。
敗北寸前の日本軍が、レイテ島で最後の戦いをしているシーンばかりだった。殆ど全滅状態の日本兵の中で、肺結核を患い、現地の食料だけで生き延びてゆく作者。日本人の腐敗した死体を横目に、食料尽きた最後は人肉まで食べる生きざまを見事に描いていた。
むごいとか地獄絵図だとか言う観点ではなく、作者の純粋な目が、戦争とはこのようなものなのだ、という実感が込められた作品である。
戦争の記録者として、戦後記述してゆく風景が描かれていたが、先祖霊、生き死霊、死霊に作者が苛まれるシーンは、描写のうまさやカメラワークのうまさが光っていた。
大地を血で染めることは、いけないことなのだ、という作者の深い思いと同時に、生と死の限界を描かせた地球の神の配慮が、我々人間の魂の原点に突き付けた問題作でもあった。

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